私とアーユルヴェーダ

代表―真美・デービス
私はケララ州にかれこれ18年住んでおります。 本職は薬剤師、薬剤師の母、内科の開業医を父に、子供の頃の遊び場は病院の待合室や、入院室と、医療とは切り離せない環境で育ちました。しかしながら、インドでは薬剤師の地位は低く、この地ではキャリアも生かせないと、10年ほど悶々と子育てに専念した後、3年前に、大病を患い、病気静養に行ったリゾートに恋をして旅行会社を立ち上げました。畑違いの世界で模索する中、2年前、日本からアーユルヴェーダの勉強に来た方の通訳をしたのがきっかけで、アーユルヴェーダに出会い、魅せられました。それから基礎知識を得るために、自分自身で現地の学校にも通いました。
もともと本職に近い分野であったこと、医療に対する思い入れが人一倍であったこともあり、旅行業を営む中で特にアーユルヴェーダに現在はフォーカスをあてています。「この素晴らしい伝承医学を多くの人に知ってもらいたい」という想いをもち、時間があれば現地のアーユルヴーェダ施設を訪問し、アーユルヴェーダ医師達との交友を深め、より詳しく確かな情報を提供できるように努力しています。
2年前、私が旅行業界に足を踏み入れた頃、ケララはこのインド古来の伝承医学をケララツーリズムの目玉商品にしようと躍起になっていました。2004年にコーチンで行われたKTM(ケララ・トラベル・マート)でも、大掛かりな展示をするアユールヴェーダ関連のブースが目立ち、「伝承医学を商品にして・・・」と私は半ばそれらのブースを白い目で眺めていました。その時は、まだアーユルヴェーダ関連のツアーは始めておりませんでした。しかし、2005年、日本の若い男性から、ケララにアユールヴェーダの勉強に来たいという問い合わせがあり、彼の希望は、ケララでも大手のアユールヴェーダ薬品会社KAL(Kerala Ayurveda Limited)のトレーニングコースに参加したいとのこと。彼はスリランカで3週間のコースをすでに終え、そこの医師達から、もっと勉強したいのなら、ケララのKALに行くように!と進められたそうでした。KALは大手薬品会社なので知っていたものの、私にとっても、アユールヴェーダのお世話は初めて!それどころか、アユールヴェーダ自体が何かも知らない・・・それから、私のアーユルヴェーダの勉強が始まりました。
Nさんが、KALのトレーニングコースに参加したのは2005年、4月の終わり、すでに基礎を住ませていた彼は、実習が主なコースを選び、私は最後の2日、セオリーの通訳のお手伝いをしました。最初はあまり興味もなかったアユールヴェーダでしたが、彼と同席して講義を聞いているうちに、私の脳の中にある何かが反応し始めました。それは、ある薬草の説明を聞いていた時で、私は、本職は薬剤師で代々薬局を開業する家に育ちましたので、その薬草の香りをかいだ時、祖父の古い薬局の壁に敷き詰められていた薬箱の匂いが、まるで樟脳のにおいをかいだ時のような懐かしい感覚で蘇りました。この香りはまさにおじいちゃんの薬箱のにおい・・・それは今も忘れることのできない不思議な瞬間でした。この瞬間から、何かが変わりました。畑違いの旅行会社を始めて暗中模索する中で、これは私にしかできない分野ではないかと!自分でアユールヴェーダを勉強し、リサーチし、観光やエステに使われようとしているこの素晴らしい伝承医学を、確かに誠実に伝えたいと・・・・。
その年の7月、やっとまとまった時間を作ってKALの最短コースに参加しました。それから自分でもアユールヴェーダの治療を受けてみることにしました。自分で体験せずして紹介はできないからです。また、KALでのアユールヴェーダ医師との交流も大切な糧となりました。特トレーニングセンターのコンダクターであるDr. ギータとの出会いは、私のアユールヴェーダへの情熱をさらに深めるものとなりました。そのほかのアユールヴェーダ施設の医師たちや関係者との交流も、医療に従事する世界に育った私にとっては心地よく、水を得た魚のように失いかけていた自分の存在価値を再び確認させてくれるものとなりました。
現在、悲しいかな大半が観光目的で紹介されているアユールヴェーダ。しかし、本来はインドのそれも特にケララの人達にとっては欠くことのできない民間医療で、何千年もの間長く大切に伝えられてきたもの、しっかりと現実の生活の中に浸透して生きている医療なのです今、ケララでは止まる所をしらないほど次々と新しいアユールヴェーダ施設がオープンしていますが、中には見るからに営利目的のいい加減な施設もあり、そういうところに何も知らずに高いお金を払って外国から来られるお客様も沢山いらっしゃるのです。
この2年、私は色々な施設をこの目で視察して回りました。色々なところを視察していくうちに、医師の話を聞くだけで、大体その施設の質も分かるようになって来ました。現地に住んでいることは、私の強みです。少しずつではありますが、各施設を訪問し、この目で確かめて、このインド古代伝承医学を誠実に伝えようと取り組んでいる人達のためにも、日本からはるばるアユールヴェーダを体験に来られる方々のためにも、これからも確かな情報提供をして行きたいと考えています。